歯を失ってしまった方の治療方法の1つが、入れ歯です。
入れ歯は失った歯の代わりとなる義歯を装着するもので、一部の歯を失った場合は部分入れ歯、全ての歯を失った場合は総入れ歯という選択肢もあります。
しかし、歯を失ったまま放置すると、悪影響が生じてしまいます。
どのような悪影響があるか、解説します。
歯を失ってしまうとどうなる?
人間の歯は、最初に乳歯が生えてやがて永久歯に生え変わります。
永久歯が失われた場合は、もう歯が生えてくることはありません。
ごくまれに永久歯が生えてこない人もいて、その場合は抜けるまで乳歯を使用し続けなくてはいけません。
乳歯と永久歯のどちらであっても、歯が生えてくると虫歯や歯周病になる可能性が高くなります。
その症状が重度になると、歯が失われてしまうこともあるのです。
歯は、生活をする上で欠かせません。
毎日の食事に必要というだけではなく、身体全体の健康にも関わってくるのです。
食事の際は、口に入れたものを歯で細かくかみ砕き咀嚼します。
細かくするのは、飲みこみやすくするというだけではなく、食べ物を消化する胃や腸の負担を少なくして、栄養を吸収しやすくすることもあります。
また、同じ食事でも、咀嚼する回数が多いと満腹感が得やすくなるため、食べ過ぎを防いでくれます。
しっかりと噛むことで、食事の味もより感じやすくなるのです。
歯の有無は発音にも大きく関わってきます。
歯がないと、隙間から息が漏れて発音が不明瞭になってしまうのです。
舌の動きにも影響するため、歯がある時と比べて、話しづらくなるケースもあります。
歯がないと、見た目にも影響が出ます。
人と接する機会が多いと、見た目は少なからず気になるものです。
特に、前歯を失っていると、見栄えが良くないだけでなく、口もとのしわが増えたり深くなったりするため、老けて見えるかもしれません。
顎の骨の吸収が進むことも
歯がない状態を放置していると、顎の骨の吸収が進んでしまう可能性もあります。
歯の本数が少ないと、咀嚼をしたとき顎の骨に十分な刺激が与えられません。
そのため、骨は少しずつ痩せ細っていきます。
また顎の骨が痩せると、入れ歯やインプラント治療に悪影響を与えることも考えられます。
特にインプラントの場合、顎の骨の量が足りないと治療がさらに大掛かりになります。
インプラントは顎の骨に直接人工歯根を埋入するため、治療前に十分な骨の量を確保しなければいけません。
そのため、骨造成が必要になり、患者さんの身体の負担や治療費の高額化につながります。
転倒のリスクも高くなる
歯を失った状態をそのままにすると、転倒のリスクも高くなります。
例えば段差などにつまずいてしまったとき、歯があればしっかり踏ん張ることができるため、回避しやすくなります。
一方、歯がないとこのような状況のときに踏ん張れず、そのまま転倒するケースが多くなります。
つまり運動機能が低下するということです。
日本歯科医師会の研究では、歯がない方は歯が20本以上ある方に比べ、転倒するリスクが2.5倍も高まるとされています。
さらに、歯が20本以上ある方よりも、1.2倍要介護の状態になりやすいという結果も発表されています。
ストレスを感じやすくなるのもデメリット
歯がない状態の方は、しっかりと食べ物を咀嚼することができません。
そのため、ストレスを感じやすくなります。
幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンは、咀嚼によって増加することがわかっています。
このことから、しっかり噛めない状態だとセロトニンの分泌量が低下し、不安な気持ちになったり落ち込みやすくなったりすることがあります。
また脳には扁桃体という快か不快かを判断する部位があります。
しっかり咀嚼できていない場合、扁桃体の活動が活発になり、日々の生活においてストレスを感じやすくなります。
ちなみにストレスは、あらゆる疾患の原因になるものであるため、なるべく日々の生活において軽減させることが望ましいです。
虫歯が原因の場合は非常に危険
歯を失った原因が虫歯である場合、放置するのは非常に危険です。
なぜなら、歯をすべて失ったり、他の症状を引き起こしたりする可能性が高まるからです。
虫歯は放置している限り、自然に治ることはありません。
そのため、虫歯で1本歯を失った場合、放置しているといずれはすべての歯を失ってしまいます。
また虫歯を放置すると、副鼻腔炎などの症状を引き起こします。
副鼻腔炎は、鼻の周辺にある副鼻腔という空洞の粘膜が炎症を起こす疾患です。
発症すると炎症から来る頭痛や鼻水などの症状があり、治療には長期間抗生物質を服用しなければいけません。
入れ歯の種類にも注意しましょう
歯を失ったまま放置していると、見た目や健康面でも問題が生じてしまいます。
そのため、入れ歯などの治療を行う必要があるのです。
ただし、入れ歯の種類にも気を付けなければ、また別の影響が出てしまう可能性があります。
通常の入れ歯は、失われた歯の両側にばねをかける「部分入れ歯」、もしくは全体の歯をカバーする「総入れ歯」になるのですが、それぞれ注意したい点があります。
部分入れ歯と総入れ歯は、それぞれどのような点に注意が必要でしょうか?
部分入れ歯の場合、固定するためのばねが金属になっているため、歯を失った部分によっては外から金属部分が見えることがあります。
それを避けるためには、ノンクラスプデンチャーなど金属を用いないものを使用する必要があるのです。
総入れ歯の場合、保険が適用されるレジン床のものは、熱が伝わりにくいことが欠点です。
金属床のものにすると食べ物の熱が伝わりやすく、食べ物もおいしいと感じやすくなります。
このような種類の違いを把握して、入れ歯を選びましょう。
まとめ
歯がないまま過ごしていると、歯並びが悪くなったり咀嚼しづらくなったりするだけではなく、消化の際に、胃や腸の負担が大きくなってしまいます。
そのため、歯のない状態を放置せず、入れ歯などを作成して失われた歯の機能を補いましょう。
入れ歯には様々な種類があるため、機能性や審美性などを考慮し、適切なものを選ぶようにすると、快適に使用できます。
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