赤ちゃんの歯が生えてこない時は乳歯萌出遅延を疑おう

一般的に乳歯が生えてくる時期は、生後6カ月~7カ月くらいからと言われています。

ところが、1歳を過ぎても乳歯が生えてこない時は、トラブルだと思って歯科クリニックを受診しなければなりません。

今回は、赤ちゃんの歯のトラブルの一つである乳歯萌出遅延についてご説明します。

赤ちゃんに起こる乳歯萌出遅延とは?

赤ちゃんの乳歯の生えるタイミングが1歳を越えても見られない場合は、“乳歯萌出遅延(にゅうしほうしゅつちえん)”の疑いがあります。

これは、1歳を過ぎても歯が1本も生えてこない状態のことを示します。

しかしながら、多くの場合は3歳までに乳歯が生え揃いますので、単に成長が遅いだけと考えて問題ありません。

乳歯が生えてくるタイミングが他の子どもと比べた時にゆっくり目の状態ですから、焦らずに様子を見るようにして下さい。

乳歯萌出遅延が起こりやすい子どもには、早産だったり、低体重児だったりする特徴があります。

とはいえ、病気ではありませんからご安心下さい。

赤ちゃんの乳歯萌出遅延には治療が必要な時がある

ところが、赤ちゃんの乳歯の状況によっては、乳歯萌出遅延であっても歯科クリニックで治療を受けなければならない時があります。

それは、乳歯が歯茎の中にある骨を破れず、埋もれてしまったままの時です。

本来乳歯は、歯茎の中にある骨を突き破り、成長することで表面に現れてきます。

この最初の段階で躓いてしまうと、歯の成長が進まないどころか、埋もれたまま出てこられないのです。

このような状況の時は、“開窓手術”を行い、骨に穴を開け、歯を外に出してあげなければなりません。

また、歯を外に出した後に、その歯を引き出す手術が必要になることもあります。

これを、“開窓けん引”と言うのですが、開けた骨の穴の中に専用の器具を入れることになるため、大掛かりな手術になります。

小さな子どもが治療に耐えられるかどうか、不安に思ってしまう親御さんも少なくありません。

そのため、開窓けん引治療に関しては、歯科クリニックと親御さんで相談して、手術を受けるかどうかを決める必要があります。

子どもの様子をよく知っているのは親御さんですから、歯科クリニックも無理強いはしません。

1歳を過ぎても乳歯が生えてくる様子がない場合は、念のため歯科クリニックを受診して歯の成長の様子を確認してもらいましょう。

乳歯萌出遅延を放置するとどうなる?

乳歯萌出遅延を放置していると、歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼす可能性があります。

特に噛む力がしっかりと発達しないと、顎の成長や発音にも影響が出ることが考えられます。

また乳歯の遅れが原因で、将来的に永久歯の生え方に問題が生じるリスクも高まります。

ちなみに早産もしくは低体重児以外にも、乳歯萌出遅延にはいくつかの原因があります。

1つは家族からの遺伝であり、家族にも同じような傾向がある場合、遅れて生えてくる可能性が高いです。

さらに必要な栄養素が不足していると、歯の成長が遅れることがあります。

乳歯萌出遅延の場合は離乳食の与え方に注意

赤ちゃんの乳歯の萌出が遅い場合、離乳食の硬さには注意が必要です。

ほぼ無歯状態にもかかわらず、月齢や年齢のみで判断して硬さをステップアップさせてしまうと、うまく処理できない子どもは無理をして処理することになります。

正しい咀嚼や嚥下を獲得するゴールデンタイムである乳児期・幼児期に間違った方法を学習してしまうことは、口腔機能の不全や顎の成長不全につながります。

そのため歯の萌出が遅れているときは無理に離乳食を食べさせず、プリン程度の硬さのものを舌と上顎で潰し、飲み込ませることで顎の成長が期待できます。

なかなか生えない場合は癒合歯の可能性もある

赤ちゃんの乳歯がなかなか生えてこない場合、癒合歯が見られる可能性もあります。

癒合歯は、本来1本ずつ生えてくるはずの歯が、2本くっついて生えてくるものです。

こちらの歯は、なかなか生えてこないケースがよくあります。

また癒合歯は永久歯に影響を及ぼすこともあり、乳歯からなかなか永久歯に生え変わらないことも考えられます。

しかし、乳幼児の段階では、癒合歯とわかっていても治療をする必要はないと考えられています。

永久歯の生え変わりが始まる5~6歳頃になったらレントゲンを撮り、永久歯の有無を確認しましょう。

ちなみに永久歯が生えてこようとしているにもかかわらず、乳歯の歯の根っこが吸収されず、グラグラ揺れないことがあります。

こういったケースでは、歯科クリニックでの抜歯が必要になる可能性が高いです。

永久歯の場合は先天性欠如の可能性も

子どもの永久歯がなかなか生えてこない場合は、先天性欠如が疑われます。

先天性欠如は、生えてくる永久歯の本数が足りないという症状です。

詳しい原因はわかっていませんが、何らかの原因で乳歯や永久歯の歯胚がつくられないことで発症するとされています。

1本だけもしくは2~3本なくなることもあれば、状態が悪いと10本以上なくなることもあります。

ただし小学生以下の子どもは、先天性欠如と診断されても基本的には経過観察を行います。

永久歯が生え揃ったときに、どのような問題が起こるのかを判断するケースがあるからです。

この記事のおさらい

今回の記事のポイントは以下になります。

・赤ちゃんに起こる乳歯萌出遅延とは、1歳を過ぎても歯が生えてこない状態のこと

・歯の成長には個人差があり、ゆっくりであるだけで病気でない

・乳歯が骨を突き破ることができない時は、歯科クリニックで開窓手術が必要になる

・1歳を過ぎても生えてこない時は、歯科クリニックで状況を確認してもらおう

以上のポイントはしっかりと押さえておきましょう。

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