歯周病になるのは、人間だけではありません。
犬や猫も、歯周病になる可能性があるのです。
仮にペットの犬や猫が歯周病になってしまった場合、飼い主にもうつってしまうのでしょうか?
今回は、ペットの歯周病についてお話しします。
現在犬や猫を飼っている方は、自分とペットの健康を守るためにも是非ご覧ください。
ペットの歯周病は飼い主にもうつる
犬や猫が歯周病になった場合、歯周病の菌は飼い主にもうつる可能性が十分にあります。
実際に人間とペットの歯周病菌を調べたところ、同じ菌が検出された事例があるのです。
よって、人間の歯の健康だけ気を配るのでなく、ペットの歯の健康にも目を向けてあげなければなりません。
何より恐ろしいのは、歯周病がうつるのはペットから人間だけでないことです。
反対に人間からペットにもうつる可能性がありますから、注意しなければなりません。
歯周病は歯科疾患の中でもうつりやすいことで有名ですから、うつしあわないためにも日頃から丁寧なケアを心掛けましょう。
人間からペットに歯周病がうつることに関するデータ
大阪大学のチームは、人間の歯周病菌が犬にうつることについての仮説を証明しています。
対象となる犬とその飼い主の歯周病菌DNAをPCR検査で調べたところ、犬の口の中から人間の歯周病菌であるプロフィロモナス・ジンジバリスが71.2%、タネレラ・フォーサイセンシスが77.3%、カンピロバクター・レクタスが66.7%と高い頻度で検出されました。
プロフィロモナス・ジンジバリスとタネレラ・フォーサイセンシスは、歯周病菌の中でももっとも病原性が高いと言われているレッドコンプレックスに該当します。
そして、犬のプラークの中には、人間における主要な歯周病原性細菌10菌種のうち、9菌種が存在しました。
さらに、犬とその飼い主の間の接触が多いと、犬と飼い主の両方から、歯周病菌が検出される傾向にあることがわかっています。
ちなみに、人間からペット、ペットから人間だけでなく、ペットからペットへの感染もあります。
多頭飼いをしている場合、複数のペットでご飯や水を与える容器、歯ブラシを共有している場合などは、それが媒介となって歯周病菌がうつることが考えられます。
ペットが歯周病になってしまう理由
ところで、ペットは人間よりも歯周病になりやすい特徴があります。
なぜなら、ペットの口内では歯垢が歯石に変化するスピードが人間よりも早いからです。
特に犬は、歯周病になりやすい動物になります。
また、ペットは人間と違い言葉で痛みや症状を伝えられませんから、症状が進行しやすいです。
となると、飼い主はどこで歯周病になっていることを気づくのでしょうか?
それは、口臭です。
人間と同じく、歯周病が悪化すると口臭がしてきます。
そのため、スキンシップをしている時などに口臭チェックをすると、早期発見に繋げられます。
犬が特に歯周病になりやすい理由
ペットの中でも、犬が歯周病になりやすい理由としては、痛みや症状を言葉で伝えられないことだけでなく、生活習慣も挙げられます。
具体的には、日常的に歯磨きを行うことが少ない点や、家庭犬の場合、口内に食べカスが残りやすいものを常食としている点、人間とは異なる歯並びをしている点などが、歯周病のリスクを高めています。
そこに、加齢をはじめとした唾液の分泌量の減少や、毛繕いなどで皮膚を舐めた際に、その細菌が歯周病に関与するといったこともあります。
マズル(口周りから鼻先にかけての部分)の短い犬種では、歯並びが整いにくいため、食べカスが残りやすいということも要因の一つです。
ちなみに、犬は人間よりもプラークが歯石に変化するのが早く、わずか数日で歯石が形成されるという報告があります。
ペットと人間で歯周病をうつしあわないためにできること
ペットと人間で歯周病をうつしあわないためには、歯周病菌が共有されない環境を作ることが大切です。
例えば、食器を共有しない、口移しをしないことです。
ペットとのスキンシップも大切ですが、キスをしたり、なめさせたりすることは控えましょう。
さらに、ペットと触れ合った後は手を洗うことも忘れないでください。
予防の基本は、人間・ペット関係なく共通しています。
ペットの飼い主は、自分とペットの歯の健康を守るために、歯科クリニックで定期検診を受けることをお勧めします。
ペットを飼っていることを伝えると、それを踏まえた上でのベストな予防法を教えてくれます。
人畜共通感染症(ズーノーシス)について
ペットと生活するときには、歯周病をはじめとする感染症に注意しなければいけません。
また、人の感染症はおよそ1,500種類あると言われていますが、その半分以上が本来人以外の動物を宿主としている病原体です。
このように、本来は人以外の動物にいるはずの病原体が人に感染し、病気を起こす感染症のことを人畜共通感染症(ズーノーシス)といいます。
具体的には、ペットに触れるだけでなく、噛まれる、引っかかれるといった要因により、その飼い主がパスツレラ症や皮膚糸状菌症、猫ひっかき病やトキソプラズマ症といった症状を引き起こします。
この記事のおさらい
今回の記事のポイントは以下になります。
・ペットの歯周病は、飼い主にうつる可能性がある
・反対に人間の歯周病がペットにうつってしまうこともある
・特に犬は歯垢が歯石になるスピードが速く、歯周病になりやすい特徴がある
・うつしあわないためには、過度なスキンシップや食器の共有を避けるべき
以上のポイントはしっかりと押さえておきましょう。