妊娠中に発症しやすい口内の病気としては、歯周病や口内炎、知覚過敏や妊娠性エプーリスなどが挙げられます。
また、これら以外にも発症の可能性がある病気は存在し、その1つに“地図状舌”が挙げられます。
ここからは、地図状舌の概要や主な原因、治療法などについて解説します。
地図状舌の概要
地図状舌は、名前の通り地図のような白い斑と赤い斑の模様が、舌の表面に現れる病気で、形態が日々変化するのが特徴です。
成人の1~5%程度の方に見られ、幼児も発症することがあります。
また、こちらは妊娠中の方も発症しやすい病気ですが、歯周病などと同じく、自覚症状はほとんどありません。
舌に何かしらの強い刺激を加えたとき、少し痛みが生じる程度です。
そのため、ふと鏡で自身の舌を見たとき、いつの間にか歪な形状になっていたり、溝ができていたりするケースも少なくありません。
地図状舌の原因
妊娠中に地図状舌を発症する主な原因は、妊娠に伴う生活や食習慣の変化、ホルモンバランスの影響などとされています。
しかし、詳しい原因については、まだ解明されていない部分も多いです。
主にストレスやビタミン不足が発症に関わっているとされていますが、医学的な根拠は乏しいです。
ちなみに、風邪や疲れなどの体調不良を伴う発熱と関係し、地図状舌を発症することもあるため、無事に出産を終え、妊娠期間が終了したとしても、こちらの病気のリスクがなくなるというわけではありません。
地図状舌を繰り返す原因
地図状舌は、一度症状が収まっても同じような症状を発症することがあります。
このような場合に考えられる原因としては、タバコやアルコールの摂取、熱い食べ物が香辛料の食べすぎなどが挙げられます。
またアレルギー反応や急性の熱性疾患により、地図状舌を何度も繰り返すことがあります。
ちなみに、地図状舌は妊娠中以外にも発症します。
良性の病変であるため、通常は自然に治りますが、2歳以上の健康な子どもの1~6%ほどに繰り返し起こるケースが多いです。
地図状舌の治療法
妊娠中に発症しやすい地図状舌は、特に痛みなどの症状がない場合、そのまま経過観察を行います。
一方で、食べ物などがしみる場合には、できる限り刺激物を避け、副腎皮質ステロイド口腔用軟膏を塗布するなどして対処します。
たとえ妊娠中であっても、歯科クリニックに相談し、正しい用法と用量を守って使用すれば、ステロイド外用剤は使用することが可能です。
また、ビタミン内服のうがい薬でよくうがいをし、口腔内を清潔に保つことも、地図状舌における治療の一環です。
もし、舌の溝が併発したのであれば、歯科クリニックに相談することで、舌ブラシなどによる清掃などを受けられる可能性があります。
地図状舌をケアできる市販の商品について
地図状舌は、主に舌をキレイにするケア商品を使用することにより、ある程度症状を改善させられる可能性があります。
これらの商品にはジェルタイプもあれば、スプレータイプもあります。
基本的には、ジェルやスプレーを舌に塗布し、舌ブラシを使用してそっと舌の表面をこそぐような感覚です。
舌ブラシは細いナイロン毛で、やわらかいものからやや硬めのものまであります。
最初はやわらかいものを選び、舌を傷めないことを意識しましょう。
また舌ブラシを使用するのは1日1回までにしておくのがベストです。
頻繁に使いすぎると、地図状舌が改善するどこから、かえって舌を傷めてしまうからです。
ちなみに、地図状舌をケアするために使用したジェルやスプレーにおいて、アレルギー反応が出る可能性はゼロではありません。
もし急にヒリヒリする、赤くなってきたなどの症状があれば、すぐに水でしっかりうがいをして吐き出し、歯科クリニックを受診してください。
地図状舌の漢方治療について
地図状舌の治療法としては、他にも漢方治療が挙げられます。
こちらは舌を胃や腸と同じ消化管の一部ととらえ、漢方によって胃腸の働きを改善することで、地図状舌とそれに随伴するピリピリ感などの痛みを改善することが期待できます。
また地図状舌に効果が期待できる漢方薬としては、以下のようなものが挙げられます。
・半夏瀉心湯
・半夏厚朴湯
・柴朴湯
・黄連解毒湯
・六君子湯 など
これらは全身的な状態や口腔内の状態に応じて選択することが重要です。
ちなみに上記の漢方薬は、胃炎や消化不良、食欲不振や嘔吐などにも効果効能がある漢方薬です。
地図状舌に似ている病気について
地図状舌とよく似ている症状を持つ病気としては、口腔カンジダが挙げられます。
口腔カンジダは、常在菌が原因で生じる疾患であり、口の中に粘膜や白い膿のようなものができ、ヒリヒリとした痛みや口臭が特徴です。
赤い斑点ができるため、見た目は非常に地図状舌に似ています。
また口腔カンジダの場合は、抗真菌剤が入ったうがい薬や塗り薬、内服薬を使って治療します。
口腔カンジダは放置すると肺炎などの原因になるため、早期の治療が必要です。
まとめ
ここまで、妊娠中に発症しやすい地図状舌について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
地図状舌は、見た目のインパクトが強く、日々形態も変わっていくため、発症すると不安を感じる方も多いです。
しかし、実際はそれほど明確な症状があるわけではなく、きちんとデンタルケアをしていれば、少しずつ治っていく可能性は高いです。
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