インプラント治療を行うためには、ある程度の骨の高さ、幅が必要であり、骨が痩せている場合は、事前に造成や増大の処置を施さなければいけません。
このような手法を“骨造成”といい、こちらにはいくつかの種類があります。
今回は、インプラント治療に伴う骨造成の種類と概要について解説したいと思います。
GBR法
インプラント治療に伴う骨造成の種類としては、まずGBR法が挙げられます。
こちらは、Guided Bone Regenerationの略で、日本語では骨誘導再生療法とも呼ばれます。
インプラントを埋入するために必要な骨の高さ、幅が足りない場合に、歯肉を剥離して骨をつくりたい場所に骨補填材、あるいは粉砕した自家骨を入れ、骨の再生を促すというものです。
こちらを実施することにより、自然な見た目で、なおかつ清掃性が高い環境が整うため、長期にわたってインプラントを快適に使用できます。
サイナスリフト
インプラント治療に伴う骨造成の種類としては、サイナスリフトも挙げられます。
こちらは、小鼻の脇にある上顎洞の底部に骨補填材を埋入し、骨再生を行うという方法です。
骨の厚みが8mm未満の場合や、多くの骨を補わなければいけない場合に行われます。
具体的には、歯肉を横から切開して骨を削り、インプラントを埋入する箇所の上顎洞の底を押し上げて骨補填材を転入し、インプラントが収まるスペースをつくるというものです。
治療期間は少し長くなる傾向にありますが、極端に骨の高さが足りない方でも、こちらの骨造成を行えば、インプラント治療を受けることが可能です。
ソケットリフト
ソケットリフトも、インプラント治療に伴う骨造成の方法の1つです。
具体的には、口腔内から上顎洞底部を持ち上げて隙間をつくり、骨移植や再生療法などで骨造成を誘導する治療法です。
サイナスリフトが、極端に骨の厚みが薄い場合に用いられる手法であるのに対し、ソケットリフトは、まだ十分に厚みが残っているものの、インプラント治療を受けるには不十分という場合に用いられることが多いです。
治療の流れとしては、インプラントを埋入する位置に穴を開け、骨を取り除き、シュナイダー膜(上顎洞と歯槽骨の間にある粘膜)を露出させ、その後できた穴に骨補填材とインプラントを埋入します。
GBR法の注意点
GBR法には、治療期間が長く、腫れや痛みなどのリスクがあるというデメリットが存在します。
GBR法によって骨がしっかり再生するまでには、短くても3ヶ月、長ければ1年以上かかることもあります。
そのため、早くインプラント治療を受けたくてもなかなか受けられないことが考えられます。
また歯茎の切開や骨の採取が必要になるため、腫れや痛みなどのリスクもあります。
手術中は当然麻酔が施されますが、術後3~7日は腫れや痛みが起こる可能性があります。
さらに、GBR法は医師の技術と経験が必要になる難しい手術です。
歯科クリニックによって術式が異なるケースもあるため、治療方法を確認して信頼できる歯科クリニックを選ぶのが大切です。
サイナスリフトの注意点
サイナスリフトは、他の骨造成と比べて多くの骨移植材が必要になります。
その上、高度な技術力を必要とする治療法でもあるため、GBR法と同様に歯科クリニック選びは慎重に行わなければいけません。
またサイナスリフトも、治療期間が数ヶ月~1年程度と長いです。
そのため、今すぐに失った歯をカバーしたい方にはあまり向いていないと言えます。
さらに多くの骨を補う治療であることから、ソケットリフトと比べると腫れやすく、痛みも出やすくなっています。
ソケットリフトの注意点
ソケットリフトは、比較的患者さんにかかる負担が少ない方法ですが、骨造成の範囲が限られてしまうという点には注意が必要です。
ソケットリフトの場合、上顎の骨の厚みがおよそ5mmはないと適応できません。
またソケットリフトは、インプラントの人工歯根を埋入する穴から器具を入れ、上顎洞底粘膜を持ち上げますが、その状態を目視することができません。
そのため、治療中に粘膜を傷つけてしまう可能性があります。
もし粘膜が傷ついてしまったら、副鼻腔炎や蓄膿症などの疾患につながることもあるため、注意が必要です。
各骨造成の費用について
骨造成は方法によって発生する費用も変わってきます。
GBR法、ソケットリフトについては、いずれもそこまで高額にならないことが予想されます。
相場はGBR法が3~15万円程度、ソケットリフトが3~10万円程度です。
特にソケットリフトは、骨の不足量が少ない場合に用いられるため、自由診療ではあるものの費用は安い傾向にあります。
一方、サイナスリフトは骨の不足量が多く、比較的重症な症例で行われます。
その上難易度も高くなるため、他の治療法に比べて費用が高いです。
具体的には安くても10万円、高ければ35万円程度かかることもあります。
ちなみに骨造成の費用が高めである理由としては、自由診療であることだけでなく、材料費がかかることも挙げられます。
まとめ
ここまで、インプラント治療に伴う骨造成の種類とそれぞれの概要について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
骨造成は、必ずしも受けなければいけないというわけではありませんが、事前に受けなければインプラントを埋入できない方がいるのは事実です。
どの方法を選ぶのかについては、歯科クリニックのアドバイスや費用、リスクなどを加味した上で決定してください。
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